マンションの大規模修繕では、配管(給水管・排水管)の修繕を行うことが重要です。本記事では、なぜ給排水管大規模修繕する必要があるのか、修繕を行うタイミング、給水管と排水管で発生する主な劣化症状や修繕方法を詳しく解説します。配管を継続して安全・耐久性に優れた状態に保つためには、常に正しい修繕を行うことが求められます。本記事を読んで、配管修繕の為の知識を身につけましょう。
大規模修繕の目的
-マンションの維持管理・安全の確保
賃貸マンションのオーナーには 専有部以外の廊下や階段などの共用部分の清掃や、電気・給排水設備などの定期点検・補修など、居住者が不自由なく生活できるための維持管理をしなければなりません。
建物は経年劣化が生じるほか、地震や台風などの自然現象によって至るところに損傷や不具合が発生します。劣化や損傷・不具合をそのままにしていれば建物の耐久性が低下するだけでなく、居住者に危険がおよぶ可能性があります。
大規模修繕を行うことで建物の耐久性の維持向上、居住者の安全を確保します。
-資産価値の維持向上
マンションの外部や内部に劣化や損傷があれば見た目が悪くなるだけでなく、建物の耐久性や機能性が低下し資産価値が下がります。
大規模修繕をして建物に生じた劣化や損傷、不具合を修繕することで、建物の耐久性・機能性が向上するとともに、マンションの資産価値を高めます。
-居住者の住環境の向上
大規模修繕をする一番の目的は建物の耐久性・機能性の向上ですが、建物の修繕だけでなく建物の機能を改良することで、居住者の住環境の向上にも繋がります。
大規模修繕は高額な工事費用がかかりますが、マンションの資産価値の向上及び居住者の安全の確保のためにも大規模修繕はマンションオーナー・管理組合の義務として行う必要があります。
大規模修繕での配管(給排水管)修繕の必要性
配管修繕の必要性は配管には寿命があり劣化したまま使用していると水トラブルが起こるからです。今では塩ビ管など腐食しにくい管が使用されていますが、一昔前は排水管や給水管は鉄管が使われていました。鉄管は鉄なので長い間使用しているとサビが発生したりと腐食していきます。
毎年定期洗浄していれば寿命は少し延びますが、それでも築20年を超えると詰まりや漏水といったトラブルが起こります。
そうしたトラブルを未然に防ぐために配管の修繕は必要不可欠です。
給排水管の耐用年数と修繕目安
最近の建物の給排水管は硬質ポリ塩化ビニル管・硬質ビニルライニング鋼管・耐火二層管など耐久性や耐食性に優れた管が使用されていますが、一昔前までに使用されていた管は給水管と雑排水管は配管用炭素鋼鋼管(白ガス管、黒ガス管、SGP管、鉄管と呼ばれる)、汚水管は排水用鋳鉄管でした。
管の種類によって耐久年数は変わりますが、概ね以下の耐久年数となります。
・配管用炭素鋼鋼管・・・約30年
・鋳鉄管・・・35年~40年
1990年より前に建築された建物は給排水管の寿命が来ているので早めに修繕しましょう。
(※毎年定期洗浄をしていても築30年を超えていたら修繕してください。)
給水管・排水管の劣化症状
-給水管
給配水は微量ですが様々な不純物が含まれおり、給水管の中に溜まっていきます。
不純物は鉄錆、有機物、塩素化合物等でその影響でヌメりがあるものや土が固まったようなものが出てくることもあります。
給配水は人の体の中に入るので、常に管内をきれいな状態にしていないと病気の原因に繋がります。
・白濁水
腐食した亜鉛メッキが溶けだして白く濁った水が出る。
・黄水および赤水
管内部にできた錆が腐食して、黄色い水や赤い水が出る。
・漏水
管の劣化により亀裂が生じ、天井や壁から水滴がにじみ出る。
・水の出が悪くなる
管内部で錆コブができ、詰まって水の出が悪くなる。
-排水管
排水管は雑排水管と汚水管に分かれます。
台所・浴室・洗面所・洗濯の排水管を雑排水管、トイレの排水管を汚水管といいます。
台所排水には油分が多く含まれるため、排水管内部に油分が付着して管内が細くなってしまい、詰まりやすい状態になってしまいます。浴室や洗面所は、髪の毛や垢などが溜まって詰まりやすくなります。汚水管は尿石が管内に付着して管径が小さくなり詰まりが発生します。
排水管を詰まったままにしていると、悪臭が発生したり流した水が逆流して漏水するトラブルが起きます。
・漏水
配管が劣化して管に穴が開いていたり継手の部分が腐食している。
・水の流れが悪くなる
配管が劣化してサビが発生し管径が小さくなっていたり錆コブに異物が引っ掛かって管内が詰まっている。
・水が濁ってくる、赤っぽくなる
管内にサビが発生していてサビの影響により水の色が変化する。
給排水管の修繕に向けて
-共用部と専有部の修繕が必要
マンションの給排水管は共用部と専有部に分かれます。
共用部配管は主に立管で専有部配管は各部屋の床下にある横引管です。
共用部配管は工法によっては住居への入室をしなくても工事できる場合がありますが、専有部配管は各住居へ入室しなければ工事できません。
配管の大規模修繕で劣化の状進行度合いから共有部配管のみ修繕することはありますが、専有部のみの修繕は基本的にはしません。
ただ専有部の配管も同時に修繕した方が金額も安く済み入居者への負担も減らせますので、同じタイミングで修繕することをオススメします。
給排水管の修繕工法
-更生工事(ライニング工事)
更生工事とは一言でいえば既存管の内側をコーティングする工事です。
既存管の内側をコーティングすることで錆の発生や腐食を防ぎます。
従来の工法は既存管の内側に樹脂を吹き付けてコーティングする塗布ライニングでしたが、現在は反転工法・形成工法・さや管工法・製管工法など、塗布ライニングより優れた工法があります。
更生工事後の耐久年数は工法により変わりますが、短いもので約10年、長いもので約40年程度です。
-更新工事(取り換え工事)
更新工事はその名の通り管を新しく取り替える工法です。
昔からある工法で古くなった管を切断して取り外し新しい管に取り替えます。最近は技術の進歩により、既にコーティングされた管があり、更新する際はこのコーティング管を使用するので錆の発生や腐食がしにくくなっています。
更新工事後の耐久年数は40年~50年程度です。
下記に排水管の補修方法と工法別の比較を書いた記事があるので是非ご覧ください。
排水管補修方法と工法別比較 | 扇矢工事株式会社 (ougiyakouji.co.jp)
給排水管大規模修繕工事費用目安
修理費用は工事の規模や場所、方法によって大きく変わります。
更新工事(取り換え工事)・・・1戸当たり30~70万円
更生工事(ライニング工事)・・・1戸当たり20~40万円
上記の金額は共用部のみの金額です。
更新工事の方が壁開口する面積が増えるためその分建築費用が高くなります。
またマンションすべての配管を補修する場合は施工日数も更新工事の方が長くなるので費用が高くなります。
更新工事は更生工事の1.5倍~2.5倍くらいの金額と考えてください。
あくまでも目安なので実際の金額を知りたい方は業者に見積もりを取ってください。
大規模修繕の費用について
マンション大規模修繕の費用は【一戸約75万円~125万円】が相場です。これは配管修繕だけでなく外層塗装や防水工事などの費用も含めます。
毎月居住者から管理費を貰って積み立てていると思いますが、積み立てられた修繕積立金が足りずに予算不足に悩んでいるマンションオーナーや管理組合は多いです。
修繕費用が足りない為、居住者から一時金として徴収したり、オーナーや管理組合が融資を受けるなどの対策はありますが、そうすると融資の返済が必要になったりと居住者の負担が更に大きくなるので、居住者から大規模修繕を反対され修繕箇所を減らしたり延期したりするマンションもあります。
大規模修繕の注意点
マンションの大規模修繕は、基本的に居住者が生活をしている中で工事を行います。 そのため、大規模修繕の実施にあたっては居住者への配慮が必要ですのでマンションオーナーや管理組合は注意する点がいくつかあります。
-居住者へ事前に承諾を得る
配管工事中は水の使用ができなくなり、騒音や臭いも多少あります。工事内容によっては住居へ入室しての作業もあるため入居者に大きな負担がかかります。 そのため、工事期間中は居住者から苦情がくることもあります。
居住者への負担を少しでも減らすために、事前に工事の内容・時期・期間を伝えましょう。事前に知らせておくことで、居住者もある程度の心構えができ、住居への入室がある場合は居住者の立ち合いできる日程に合わせて工程を組むことができます。
-工事中も居住者へ配慮する
マンションで大規模修繕を実施する際、施工業者はエントランスなどに工事掲示板を設置して、工事に関する情報を提供しています。
賃貸マンションでも同じように施工業者に工事掲示板を設置してもらい、工事に関する情報のほかに、騒音・振動・臭いが発生する工事日程や、洗濯物が外に干せない日などの情報を発信してもらいます。情報を発信することで、苦情やクレームなどのトラブルを極力減らすことができます。
まとめ
今回はマンション大規模修繕時の配管修繕の重要性についてお話ししました。
給排水管を修繕せずにそのまま使い続けると詰まりや漏水のトラブルが起こります。
そうしたトラブルを未然に防ぐために配管の修繕は必要不可欠です。
給排水管は目に見えないところなので知らない間に劣化が進んでいます。
マンションの大規模終戦は基本的に12年に一回の頻度で行うので2回目の大規模修繕で配管も修繕してください。
2回目で修繕できなかった場合は3回目で必ずしましょう。築年数が古くなりすぎると修繕工法も限られてきて費用が高額になることがあります。
早めに修繕することで水トラブルを防ぎ、居住者の安全を確保し、修繕費用を抑えることもできます。
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